– 2021.6.25 –
5月下旬から6月上旬にかけて長崎県川棚町を流れる石木川のほとりに滞在しました。
過去のスケジュール帳を見返すと、私が前回訪れたのは2019年11月だったので、約1年半ぶりの訪問ということになります。
久しぶりとなった理由は新型コロナウイルスの感染を懸念し、ほとりに暮らす住民の方々を心配してのことです。
そのため自宅を発つ直前に地元の診療所で唾液サンプルによるPCR検査を受け、陰性と確認してから長崎へ向かいました。
検査費用は健康保険適用外となるために3万円でしたが、安心と信用を買ったのだと割り切りました。
石木川では5月中旬からゲンジボタルの乱舞がはじまります。
コロナ禍によって昨年に引き続き今年も中止となりましたが、石木川のほとりでは5月最後の土曜日に「ほたる祭り」が催され、この祭りの前後が乱舞のピークと言われています。
ゲンジボタルはサナギから成虫へ羽化すると1〜2週間しか生きられません。
この短い間にメスとオスは光でコミュニケーションを取り合い、交尾をして子孫を残します。
地元の方によると、今年は例年に比べて羽化が早く、さらに昨年は豪雨による増水が続き、川に生息しているホタルの幼虫が流されたのではと心配する声も聞きました。
それでも見応えのある乱舞を見ることができました。
やはり石木川の環境はゲンジボタルの生息に優れており、かつ生息数が多いのだと実感しました。
石木川のほとりに滞在中、カメラ(CANON EOS R5)を川の脇に設置し、夜空を乱舞するゲンジボタルをタイムラプス機能で撮影しました。
タイムラプス映像を撮影後、満天の星とホタルの光跡を組み合わせた写真を撮りたいと考え、4日後の滞在最終日にそのチャンスが訪れました。
タイムラプスでのホタルは忙しなく見えるので、この日は写真を撮ることに集中。
ウェーダーを履いて水の中に2時間ほど立ち続け、ホタルが狙った場所に来てくれるのを待ちました。
そして撮影できたのが下の写真です。
満天の星が瞬く中、ホタルの光跡がまるで流れ星のように見えました。
この環境を次世代に受け継ぎたいとの思いがしぜんと湧いてくるほど感動する景色。
見上げた星に願いを込めてシャッターを押しました。
今回の滞在では動画撮影に時間を割き、石木川のほとりで営まれている普段の日常や自然環境を記録しました。
自宅へ帰宅後、編集してYouTubeで公開したのが以下の映像です。
動画撮影だけでなく編集自体もまだまだ未熟ですが、伝えることを優先しました。
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第1弾の公開映像は、現地で営まれている〝普段の日常〟を3分間にまとめたものです。
石木ダムの関連工事現場では、地元の方々が中心となって連日抗議の座り込みが行われていますが、そのような日々の中でも私たちと変わらない日常があるのです。
そのことを知って欲しいと思い、撮影編集しました。
第2弾の公開映像は、石木川のほとりで乱舞するホタルです。
石木川はゲンジボタルの生息数が多いだけでなく、川幅が狭いために手が届くほどの近さでホタルが乱舞する様子を楽しむことができます。
コロナ禍の中でも蛍を楽しむ人の姿を石木川で見かけました。
石木ダムができると、これら景色も失われます。
条件的にはけっして楽ではない撮影状況でしたが、どうやったら目の前の凄さを伝えられるか…。
いろいろ悩み考えた末に完成した映像です。
石木川のほとりでは半世紀前に立案された石木ダム計画によって立ち退きを迫られている住民がいます。
「ほーちゃん」という愛称で呼ばれている石丸穂澄さんもその一人です。
ほーちゃんは心の病から自宅を離れるのが厳しいため、たびたび「ここでしか生きられない」と口にしています。
そう思う一方、可能ならばもっと自由に外へ出かけたいと、ほーちゃんは思い続けています。
しかし現実的にそれは難しく、子どもの時から慣れ親しみ、自然や環境がほとんど変わっていないこの場所だからこそ安心して生活ができているのだと、ほーちゃんは話しています。
第3弾の映像は、ほーちゃんの話しをメインに編集し、ほーちゃんにBGMのピアノ曲を弾いてもらいました。
ほーちゃんが発する言葉とピアノに耳を傾けてください。
私の石木川通いは、これからも続きます。
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拙著『石木川のほとりにて〜13家族の物語(パタゴニア刊)』は、川原地区からの立ち退きを拒み、石木ダム計画の見直しを求め続けている13世帯の日常の記録したものです。
パタゴニアの公式オンラインショップで購入可能で、書籍のみ購入される場合は送料パタゴニア負担で1,527円(税込)です。
住民がなぜダムに反対するのか…。
拙著を手に取り、その思いを知る人が増えることを期待しています。